2016年11月30日水曜日

すみだ北斎美術館

11月22日、北斎のふるさと墨田区にすみだ北斎美術館が開館。テレビのニュースなどでもとりあげられ、大きな話題になりました。東京で初めての北斎専門美術館、気になります!
というわけで日本美術初心者 yu の今回のレポートは「すみだ北斎美術館に行ってみました!」です。
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すみだ美術館は、都営地下鉄大江戸線 両国駅から徒歩5分ほど。せっかく来たので、下町情緒を味わいながらゆっくりと美術館に向かって歩いていると「北斎は90回以上引っ越しをしてたんだよ〜」とか「3食とも出前だったから家に食器がなかったんだよ〜」とか、あちらこちらから北斎ウンチク話が聞こえてきました!さすが北斎ゆかりの地。北斎ファンが多くいるのですね。そんな豆知識に耳を傾けているうちに、あっという間に入り口に到着です。
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建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を受賞するなど、世界的な評価を得ている建築家の妹島和世さんがデザインを手がけたという外観は近未来的。今までの美術館とは全く違った印象でした。
編集長の洗馬さんは「そんな混んで無いでしょう」といつも通りにイライラしながら言っていましたが、平日にも関わらず沢山の人が!さすが北斎、人気ですね。
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エントランスでチケットを購入した後は、エレベーターで4階まで上がり、階段を降りながら展示を見ていきます。この美術館は4階と3階が展示室になっているんですよ!

とにもかくにもエレベーターを降りると常設展示のスペース。この常設展に足を踏み入れて一番最初に迎えてくれるのは、北斎晩年の傑作とされる大絵馬「須佐之男命厄神退治図(すさのおのみこと やくじん たいじのず)」です。
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こちらは関東大震災で焼失してしまったという、北斎幻の傑作。モノクロの写真しか残っていないというところから最新の技術により推定復元されました。モノクロの写真たった1枚からどのようにしてここまでカラフルな復元をすることができたのか、その秘密は4階展望ラウンジの動画でわかりやすく学ぶことができます。この絵の復元プロジェクトはNHKの「ロスト北斎」という番組でも取り上げられていましたので、ご覧になった方も多いのではないでしょうか。
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そして常設展の中で一番人を集めていたのが、リアルに再現された北斎のアトリエ。ここにはまさかのトリックが!思わずビクっとしてしまいました。ネタバレになってしまいますので、ぜひ実際に見てください!
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現在は常設展示のほかに開館記念展として「北斎の帰還-幻の絵巻と名品コレクション-」が開催されています。「北斎のイメージ」「北斎の描いたすみだ」「幻の絵巻-隅田川両岸景色図巻-」「名品ハイライト」の4つの章から構成されていて、前後期合わせて約120点の名品を見ることができます。

こちらの企画展の最大のみどころは「隅田川両岸景色図巻」(すみだがわりょうがんけしきずかん)。約100年余りも行方知れずとなっていた為、幻の絵巻といわれていましたが、なんと平成27年にフランスで再発見され日本に戻ってきたのです。6m以上といわれるその長さは想像以上にとても長く、雑誌でもネットでも6m全体が見れるものは、なかなかありません。これは足を運んで見に行く価値がありますね!
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差DMA-隅田川両岸景色図巻(部分:三囲牛嶋神社付近 拡大図)-min
『隅田川両岸景色図巻』紙本着色一巻 28.5×716.0㎝ 
すみだ北斎美術館にはそこかしこに北斎キャラが隠れています!そんなキャラクターを探しながらあるくのもこの美術館ならではの楽しみですね。
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すみだ北斎美術館

【開館時間】9:30~17:30(入館は閉館の30分前まで)
【休館日】毎週月曜日(月曜が祝日または振替休日の場合はその翌平日)、年末年始(2016年12月26日~2017年1月1日)上記以外にも臨時休館する場合がございます。
【住所】東京都墨田区亀沢2丁目7番2号 地図
【TEL】03-6658-8931
●常設展示
【観覧料金】一般400円/高校生・大学生・65歳以上300円/中学生以下無料
※高校生・大学生の方は生徒手帳・学生証を、65歳以上の方は年齢を証明するもの(健康保険証・運転免許証など)のご提示をお願いいたします。
※観覧券は1階チケットうりばでお買い求めください。
※団体(学校団体以外)でのご来館の方は団体のみなさまへをご確認ください。
※学校団体でのご来館の方は、学校の先生方へをご確認ください。
【期間】2016年11月22日(火) 〜 2017年1月15日(日)
前期:11月22日(火)~12月18日(日)
後期:12月20日(火)~1月15日(日)
※作品保護のため前後期で一部展示替えを行います。また、各期においても途中で一部展示替えを行います。
【観覧料金】一般1200円/高校生・大学生・65歳以上900円/中学生・障がい者400円
※小学生以下は無料。 
※中学生・高校生・大学生(高専、専門学校、専修学校生含む)は生徒手帳または学生証をご提示ください。 
※65歳以上の方は年齢を証明できるものをご提示ください。 
※身体障害者手帳、愛の手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、被爆者健康手帳などをお持ちの方及びその付添の方1名まで障がい者料金でご覧いただけます(入館の際は、身体障害者手帳などの提示をお願いします)。 
※開館記念展のチケットは、会期中観覧日当日に限り、常設展もご覧になれます。

2016年11月10日木曜日

北斎とダビンチ

北斎は世界最高のアーティスト!

日本ではあまり知られていないことですが、北斎は江戸時代の市井(しせい)の絵師にもかかわらず、海外で最も有名な日本人であり、各方面から絶賛されている特別な存在のアーティストです。

ダ・ヴィンチと双璧をなす、科学的視点に基づく作画

14世紀半ばから16世紀にかけてのイタリア・ルネサンス期を代表する大芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチは、絵画、彫刻、建築、音楽といった芸術分野はもとより、科学や数学、工学、解剖学、地学、植物学といったジャンルにも才能を発揮した、まさに万能の天才です。ダ・ヴィンチの科学的・多角的な知識や見地はなんと、自然と共生し、自然から学んだものだと本人が語っています。そして、「絵画こそ最高の芸術」だと断言しているのです。同時代の偉大な彫刻家・ミケランジェロはその言葉に憤慨(ふんがい)し、ダ・ヴィンチに詰め寄ったところ、「君には空気は表せないが、私は空気が描ける」と言い返されます。科学的な視点をもっていたダ・ヴィンチは、遠くの山が青く見えるのは水蒸気の層によるものだということを知っており、空気を描くという意味がわかっていたのです。そして、空気遠近法という画法を編み出し、絵画こそ最高という言葉を裏付けました
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ダ・ヴィンチと同じように、北斎もつねに自然に目を向け、的確に描き表すことを可能にした絵師のひとりです。その結果、自然と人間が闘っているという観点をもつようになり、『神奈川沖浪裏』(かながわおきなみうら)の大波をはじめ、風や水の動きまで絵画として表現することに成功したのです。
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ここに紹介したダ・ヴィンチのスケッチと北斎が描いた波を見比べてみてください。時代や技法の差こそあれ、描写はまるでトレースしたかのように似通っています。しかも、北斎のほうがはるかにアーティスティック。この、万能の天才にも勝る観察眼こそ、北斎の絵の凄さの秘密です。
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世界的建築家の作庭のモデルになった!

帝国ホテル旧本館の設計者として知られるアメリカの建築家、フランク・ロイド・ライトは、日本の近代化に尽力するかたわら、浮世絵を愛し熱心にコレクションをしていたという側面があったことをご存じでしょうか。それを物語るのが、ライトが手がけた歴史的な作品、「落水荘」(らくすいそう)の建築秘話です。落水荘は、アメリカのピッツバーグで、デパートの経営者として成功したオーナーのカウフマンのために設計した邸宅の別名で、その名は邸内を勢いよく落ちていく滝の水に由来しています。自然豊かな郊外にふさわしい別荘を希望したカウフマンのオーダーを受け、ライトが示した設計図は、なんと滝の上に立っている邸宅。
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それを見たカウフマンは、滝の上ではなく滝を見ながら暮らしたいと変更を要求。それに対してライトは、「滝やそれを取り巻く自然と一体となって暮らしてもらいたくて、この家を設計した」と答えます。そして、やおら取り出した一枚の浮世絵が、北斎の『諸国瀧廻り』(しょこくたきめぐり)でした。
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滝から流れ落ちる水をユニークに描いた浮世絵を眺めるカウフマンにライトは、日本人が自然と共生していることを語りかけ、納得させるとともに満足へと導いたと伝えられています。近代建築史に偉大な業績を残し、その作品が世界遺産に指定されることが確実視されているフランク・ロイド・ライトが、北斎の『諸国瀧廻り』を手本にしていたとは!海外の別荘にまで影響を及ぼし、それが歴史的建築物として名を馳せるとは、北斎には知る由もなかったことでしょう。
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