2017年3月11日土曜日

写楽

浮世絵の魅力のひとつにいわゆる大首絵があります。これはもともと、錦絵が誕生し遊女や歌舞伎役者を描いた浮世絵がブロマイド化して行く過程で誕生した浮世絵の一形態。贔屓の役者の特徴的な表情や遊女の美貌を間近に見たいという欲求に答えた浮世絵版画です。
この大首絵をもっとも得意とした絵師が東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)であることに異論を挟む人は少なぃでしょう。中でも最も有名なこの作品は、悪党が今まさに大金を狙って相手に襲いかかる一瞬を、これでもかと極端に変形し、誇張した大胆不敵な表現で見る者を圧倒。懐からぬっと出された両手が一種の不気味さをも演出し、「いよ!これぞ役者絵の神髄」と思わず声をかけたくなるほどです。
広重-min東洲斎写楽『三代目大谷鬼次の江戸兵衛』大判錦絵一枚 寛成6(1794)年 写真提供/Bridgeman Images(PPS通信社)
大首絵の特徴として、絵の描かれる範囲が狭いために、役者たちの場面状況がわかりにくいという弱点がありました。しかし、写楽はそれを逆手にとって顔の各部を象徴的にデフォルメし、さらに特徴的なニュアンスを手に演出させることで、際立つ個性を存分に見せつけたのです。
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舞台上の「決定的瞬間」を捉え、わずか10か月の短期間で姿を消した絵師が東洲斎写楽。役者の心理とその人柄の内面までをも鋭利にえぐり出した写楽の作品は、人々の度肝を抜き、一大センセーションを巻き起こしました。

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