2016年6月4日土曜日

「葛飾北斎の凄さ!」

「葛飾北斎の凄さ!」

北斎の浮世絵にであったのは、かなりの昔であった。
長野の小諸までも見に行った。
暫くは、展示会があれば、行くことが多かった。
最近、葛飾北斎をもっと知る事が、浮世絵の世界の見直しと思うと
同時に、90歳程まで、徹底した自身の作品追求の姿は、
自身に対して大甘な自分にとっても、大いに学ぶべき事が多い。
・その信条と気概
己六歳より、、、、、八十六歳にしては、益々進み、九十歳にして
その奥義を極め、百歳にしてまさに神妙ならぬ人なり。
この絵に対する執念、追求心、そしてその傲慢さは、素晴らしい。
例えば、
人物を描くには、骨格を知らねば真実とはなり得ない、と言うことで、
接骨家名倉弥次郎に入門した。
絵画には、ヨーロッパを中心に、色々な流派の、色々な
題材のモノが多数ある。
昔、元西洋近代美術館館長の高階さんから光の三原則を
基本とする印象派の話を聴き、西洋絵画の奥深さを知った。
浮世絵は、私にとって、
それとは、一線を画するものだ。
もとは、今の人気雑誌の類であったのだろう??
人気役者、江戸の風物詩などを大衆?に広く見せるためであったのだから、
その実力は察しがつく。
しかし、北斎、歌麿、チョット違和感のある写楽などの作品を見ていると、
日本土壌でしか育たない細やかさとイマージュを高める世界観があると思った。
有名な富嶽三十六景や潮干狩図の作品に多様されている遠近感を存分に使った
シンプルな構成と見る人にイマージュを沸かすテーマの設定は、他の絵画の比
ではない。
また、基本は、版画を何枚も重ね絵とした多層、多色のもであり、厳密には、
その出来は、一枚、一枚違うのである。
この多様的な出来が、個人的には好きである。
今流では、大量生産の江戸時版だろうが、実は、個別生産型なのである。
浮世絵に惹かれるのは、昔、まだ、モノクロ全盛時に、自身で出向いて撮った
写真の現像から作品作りまで、やっていたことが大きな影響を持っていると思う。
浮世絵を見ていると、流石と思うものの多くは、そのフレーム切り出しの上手さ。
シンプルな中にも、情景、例えば、滝の音、雨脚の速さ、小舟の動きなどが
見る人各様に迫って来る様ではないか……
そして、好きなのが、肉筆画の凄さである。「潮干狩図」に見られる透視画法、
等の和漢洋の表現方法や技法の混然一体の作品や晩年の「肉筆画帖」にある様な
その精密な描き方は、北斎にして、画狂老人と言わしめた執念の凄さにある。
この点、浮世絵とは違いがあるが、伊藤若冲の超リアリティは、同次元で、
驚嘆に値する。リアリティを徹底追求するためなのか??その表現技術は、
誰も真似の出来ない領域かもしれない。
西洋や中国などの他国にはない、美意識、文化的土壌である。
写真は、光の加減を撮影対象と自身のイマージュに、如何に合わすのか、
に自身の才能を発揮し、
現像液の持つ粒子を自身の想いに合わして、作り上げていく事が、基本となる。
そこに、表現方法の多様性が出て来る。
土門拳さんや木村伊兵衛さんの作品を見ているとそれを強く感じる。
写実性と言う点では、少し違うのでは?との意見もあろうが、
肉筆画などを見ていると、同根にある様な気もする。
チョット、素人的発想かも。
浮世絵には、全面的とは言えないが、それがあり、出来るのである。
おなじ、原画であっても、年代を経て復刻された作品が、以前の
ものと違うなー、と感じた方もおられるはず。
浮世絵理解のベースには、日本人としての、共通項がある。
これを日本文化、その美意識の発露と捉えてもよいはず。
・個人的に興味ある作品
以下の作品は、錦絵として、描かれているが、「対象物が持つ
本質をあらゆる角度から捉えようとしている」視点の違いが
広重の東海道53次と本質的に違うのでは、と思う。
1)富嶽三十六景
富士山を主題、46図。凱風快晴(通称赤富士)、神奈川沖波裏 など。
収集家にとっては、その構図、色使いなど素晴らしいのであろうが、
江戸時代の庶民の生活風景、江戸の賑わいなど、チョット違う
視点で見ていると結構面白い。
2)千絵の海
各地の漁撈を画題とした錦絵。変幻自在する水の表情と漁業に
たずさわる人が織り成す景趣が描かれている。全12図。
既に、無くなった漁労の風景が生き生きと描かれており、古き
日本の風物詩が語れている。
3)諸国滝まわり
落下する水の表情を趣旨として全国の有名な滝を描いた。全8図。
相州大山ろうべんの滝(神奈川県伊勢原市大山の滝)
東海道坂の下清流くわんおん(三重県亀山市関町坂下)
美濃国養老の滝(岐阜県養老郡養老町)
木曽路の奥阿弥陀の滝(岐阜県郡上市白鳥町、日本の滝百選。白山の参拝)
木曽海道小野の瀑布(長野県木曽郡上松町、現存)
和州吉野義経馬洗い滝(奈良県吉野郡あたり、滝はなし)
下野黒髪山きりふりの滝(日光市、現在は日光3名滝)
東郡葵ケ岡の滝(東京、赤坂溜池)
4)諸国名橋奇覧
全国の珍しい橋を画題とした11図。
摂州安治川の天保山(大阪、天保山)
足利行道山くものかけ橋(足利の行道山)
すほうの国きんたい橋(山口県の錦帯橋)
越前ふくいの橋(九十九橋、福井市)
摂州天満橋(大阪天満橋)
飛越の堺つりはし(飛騨と越中の国境)
かうつけ佐野ふなはし古図(群馬県佐野市)
東海道岡崎矢はぎのはし(三河の岡崎)
かめいど天神たいこばし(亀戸)
山浅あらし山吐月橋(京都嵐山渡月橋)
ともかく、北斎の凄さは、その対象ジャンルの広さと作品の多さにある。
読本挿絵、摺者、肉筆画、黄表紙挿絵、錦絵など、当時の絵に関する
ほとんどのジャンルを手がけ、しかも、そのレベルはとても高い。
北斎は、単なる風景画作家ではない。
個人的にも、更に深く知りたい人間である。

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